4.232018
妻と二人の退職金
私の大先輩で、御年八十一歳の太田さん。
なんと、つい先日まで現役の瓦職人だった。
この度、ようやく引退を決意されたと言うことで
素晴らしいお手紙を頂いた・・・。
「妻と二人の退職金」
「私は、この四月で八十一歳になる。
そこで前から考えていた仕事をやめる事にした。
六十年間、働き続けてきたのも、
妻は愚痴一つ言わずに、いや時折少しの愚痴はあったものの、
一生懸命家庭を守ってくれた。
二人の子供も自立して家を立てて、
頑張って二人づつに孫もいる。
そこで私も好きな事に打ち込めたのも
ひとえに妻のお蔭と感謝している。
そしてもうじき結婚五十年過ぎるが、
まさか結婚五十年の金婚式を迎える日がこようとは
結婚当初は思いもしなかった。
あの当時は、働く事で一杯で日曜日も祭日もなく、
アルバイトをして働いた。
だが時には、喧嘩もしたが、すぐに仲直りした。
今思うと長い人生であったがあっとの思いです。
金婚式と仕事やめた事に妻は、祝いとしていつもよりも多めの
小遣いを用意してくれて、
これで長い間働いてくれた最後退職金だよと手渡した。
開けて見るとあまりにも多さにこんなにいらないと言って
返したら、それじゃこれは二人の退職金にしようと言ってくれた。
そこで私は、今まで健康で働いてこられたのは、
君のお蔭だからと貰ったお金の半分を妻に渡した。
この時の感激を忘れる事なくこの先何があるか分からないが、
夫婦仲良く人生の最終盤を過ごしてゆく事決意した。
そしてお互いにお疲れ様でした。ありがとうと心にいいきかせた。
平成三十年四月吉日 太田正雄」
太田さんはいつも笑顔だ。
あの笑顔を見ると、俺の心も何故だか嬉しくなる。
俺もあと三十年後に、ああいう笑顔でいられるだろうか・・・。
最後の
「ありがとうと心にいいきかせた・・・」
って言うのが、また最高にいい。
感謝。
合掌・・・